天鉄局NB運転区

国鉄天王寺鉄道管理局で活躍した車両の話題を中心に、鉄道模型(Nゲージ)とBトレインの話題なども記してゆきます。

客車の基本常識(vol.3)

今ではすっかり目にすることが無くなった客車列車。
ブルートレインと呼ばれた寝台特急が次々と廃止になり、その豪華版として登場したカシオペアトワイライトエクスプレスも廃止になりました。

国鉄末期に登場した「ジョイフルトレイン」は、どこにでも行けるように客車主体でしたが、その系譜を引き継ぐ列車は、JR九州の「ななつ星」を別として、JR東日本の「四季彩」もJR西日本の「トワイライト瑞風」も電車列車(発電用ディーゼル機関搭載)で誕生し、もはや自由に組成される客車列車を見る機会はほぼ失われました。

20系寝台車が登場するまでは、客車はほぼどの形式でも自由に組成されていましたが、しかし好き勝手に編成を組んで良いわけではなく、一定の決まりがありました。
つまり、”扉の位置” とか ”食堂車の向き” とか ”寝台車の向き” とかいちいち決まっていたのです。

これらについておさらいしておきたいと思います。(勿論国鉄の場合です)

 

旅客輸送基準規定には、”第4章旅客車 第2節列車の編成” がありその中で次のように定められています。

第31条
旅客車の方向及び列車の編成順序を定めるための各線の基準駅は、別表第1のとおりとし、基準駅に近い方向を基準寄り、遠い方向を基準反対寄りとする。

 別表第1では、路線ごとの基準駅が記されています。

東海道本線・・・神戸
東海道新幹線・・・新神戸
北陸本線・・・米原
高山本線・・・岐阜
中央本線・・・東京
山陽本線・・・門司
山陽新幹線・・・小倉
播但線・・・姫路
山陰本線・・・幡生
関西本線・・・名古屋
紀勢本線・・・亀山
東北本線・・・東京
東北新幹線・・・大宮
上越新幹線・・・大宮
常磐線・・・上野
高崎線・・・大宮
上越線・・・高崎
奥羽本線・・・福島
羽越本線・・・新津
信越本線・・・高崎
総武線・・・東京
予讃本線・・・宇和島
高徳本線・・・徳島
徳島本線・・・徳島
土讃本線・・・終端駅
鹿児島本線・・・鹿児島
鹿児島新幹線・・・博多
長崎本線・・・長崎
久大本線・・・大分
豊肥本線・・・大分
日豊本線・・・鹿児島
筑豊本線・・・若松
函館本線・・・函館
室蘭本線・・・長万部
日高本線・・・分岐駅
留萌本線・・・終端駅
根室本線・・・滝川
宗谷本線・・・旭川
名寄本線・・・遠軽
石北本線・・・新旭川遠軽新旭川 遠軽~網走:網走
繊毛本線・・・東釧路

昭和41年の法令ですから、現在は存在しない路線や、逆にこの表に記載のない路線もあります。開業間もない東海道新幹線はともかくとして、東北新幹線上越新幹線、はては鹿児島新幹線なんて記載があるのを「?」と思った方もいるかもしれませんが「整備新幹線計画」というのがありまして、つまりこの時点でそういう路線が計画されていたからなのでしょう。

で、具体的に車両のどっちを「基準寄り」向きにするかを、第32条で定めています。

32条
旅客車の定位は、原則として、次の各号に定める側を基準寄りの方向に置くものとする。
(1)A寝台車…出入台のある側。但し特急用車両は出入台の無い側。
(2)特別車…片出入台の車両は出入台のある側。但し、特急用車両は出入台の無い側、
両出入台の車両は洗面所のある側又は運転室のある車両は運転室のある側。
(3)A寝台緩急車…車掌室のある側
(4)特別緩急車…車掌室のある側
(5)B寝台車…出入台のある側。但し特急用車両は出入台の無い側。
(6)普通車…片出入台の車両は出入台のある側。但しナハ20スハ44及びスハフ43形式車は出入台の無い側。
両出入台の車両は洗面所のある側。
(7)B寝台緩急車…車掌室の無い側
(8)普通緩急車…車掌室の無い側
(9)食堂車…料理室の無い側
(10)A寝台とB寝台との合造車…A寝台のある側
(11)特別室と普通室との合造車…特別室のある側
(12)食堂と客室との合造車…食堂のある側
(13)客室と荷物室との合造車…荷物室のある側
(14)客室と郵便室との合造車…郵便室のある側
(15)客室と荷物室と郵便室との合造車…荷物室のある側
(16)前各号以外の旅客車…任意

こういう決まりに従って、たとえば特急「つばめ」の下り列車ではスハ44は後位側に、スロ60やナハ10は前位側に出入り口が来るように編成されるのです。

実はナロ20はどちら向きに連結するのか考えていたわけですが(一応模型の座席表現は出入口方向を前位にしている)やはり出入口が(下り列車で仕立てる場合)前位で良かったのですね。