天鉄局NB運転区

国鉄天王寺鉄道管理局で活躍した車両の話題を中心に、鉄道模型(Nゲージ)とBトレインの話題なども記してゆきます。

紀伊半島を巡る多層建て急行《続編》

随分以前に「紀伊半島を巡る多層建て急行」というタイトルで記事を書きました。

今回はその続編です。

 

前回記事で取り上げた新宮発名古屋行の急行「しらはま1号」について、時刻表を見ながら辿ります。
ちなみに前回記事ではヨン・サン・トオこと昭和43年10月ダイヤ改正によるダイヤで辿りましたが、今回は昭和50年10月のダイヤ改正後の時刻で辿ってみます。

 

まず興味深いのは、この新宮発名古屋行の列車番号303D ということ。
つまり下り列車であるということです。

例えば同様に新宮発名古屋行の急行「紀州1号」の場合、列車番号912D と上り列車です。

ちなみにこの時代は、まだ現代のように下り列車が奇数号、上り列車が偶数号という列車名になっていません。
したがって、上り「紀州1号」と下り「紀州1号」が存在しています。

他の名古屋行の急行「紀州」も
紀州2号」は 1914D(紀伊勝浦発)
紀州3号」は 916D(紀伊田辺発)
紀州4号」は 1918D(紀伊勝浦発)
という具合に、どれも偶数番の列車番号で上り列車です。

つまりは、紀伊半島を東側経由で名古屋に向かう「紀州」に対して、「しらはま」は西側経由で向かう列車なのですね。

 

それでは時刻表を見てみましょう。

303D「しらはま1号」新宮~和歌山

この列車は 8:30 に新宮駅天王寺方面に向けて出発します。
「しらはま1号」は単独の列車ではなく「きのくに4号」と併結している多層建て急行であることもわかります。また、グリーン車は「きのくに」にのみ連結されていることも見て取れます。

和歌山駅には 12:35 に到着します。新宮~和歌山が約4時間の行程です。現在は特急くろしおで約3時間半ですから、急行列車としては妥当なところです。

和歌山駅に到着すると「しらはま1号」「きのくに4号」を分割し、「きのくに4号」はそのまま紀勢本線阪和線)を北上して終点の天王寺に向います。
両列車の和歌山駅出発時刻から「しらはま1号」の方が前よりに連結されていたことも読み取れますね。(しらはま 12:38発、きのくに 12:43発)

 

4206D「しらはま1号」和歌山~高田

和歌山駅を出発した「しらはま1号」は列車番号を 4206D と変えて、和歌山線を王寺に向けて進みます。

以前に投稿した「東京発和歌山市駅行寝台車」では和歌山線内を各駅停車で運行されていましたが、この列車は れっきとした急行列車で運行されていますね。

 

高田駅には 14:10 の到着。普通列車だと 2時間20分程かかる行程を 1時間40分程で走りました。ここから桜井線に入ります。

 

4206D「しらはま1号」高田~奈良

桜井線経由で奈良には 14:51 に到着。今度は関西本線に入ります。

 

4206D「しらはま1号」奈良~亀山~名古屋

奈良駅には3分停車して 14:54 の出発。亀山には 16:21 に到着します。

ここで先着の「紀州4号」に併結されます。
紀州4号」は 12:26 の紀伊勝浦発。
最初に記した 1918D(紀伊勝浦発)のことです。こちらは紀伊勝浦を新宮・多気方面、つまり紀勢本線を名古屋に向けて東向きに出発した列車で、新宮を 13:00 に出発しています。

したがって、新宮発 8:30 の「しらはま1号」と、新宮発 13:00 の「紀州4号」が 16:21 に亀山駅で出会い、併結して名古屋に向かうということになります。

ちなみに「紀州4号」はここまで始発から併結してきた「くまの」を分割しています。
亀山駅で分割された「くまの」は柘植駅から草津線経由で京都へと向かいます。

亀山で合流した「しらはま1号」と「紀州4号」は名古屋に向いますが、この時の列車番号は 1918D ということになるのでしょう。
新宮を 303D として出発した名古屋行「しらはま1号」は、最終的に 1918D となって名古屋に向かうのです。

 

当然、こんな「しらはま1号」を新宮~名古屋と通しで乗車する客はいなかったと思われますが、このロングラン運用は興味深いですよね。

 

今回、あえて ヨン・サン・トオ を取り上げなかったのには理由があります。

1つは今回取り上げた、ゴオ・サン・トオでの「しらはま1号」が始発駅から併結している下り「きのくに4号」の編成を以前に取り上げているということ。

この「きのくに4号」は和歌山で「しらはま1号」を分割しますが、かわってキハユニ16を含む3両を併結します。

詳しくは上記リンクをご覧ください。

 

そしてもう1つは、昭和43年10月改正時の「しらはま1号」を含む多層建て列車はもっと複雑だからです。

 

ということで、今回は肩慣らし。

今度は昭和43年の「しらはま1号」の軌跡を辿ってみます。